第9回
AIの「机の広さ」——長いチャットほど馬鹿になる
芳村裕太 · LLC Rip.D
- 営業マネージャー
- AI
- AIの限界
地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。
営業マネージャーの方から、こんなお悩みをよく聞きます。
「同じチャットで何日も商談の相談を続けていたんです。最初はすごく的確だったのに、だんだん回答がちぐはぐになってきて……なんでだろうと思いつつ、そのまま使い続けてしまっていました」
これは、AIの調子が悪くなったわけではありません。今回は、その理由と対処法をお伝えします。
この記事でわかること
- 長く使うほどAIの回答がズレていく理由
- AIの**「机の広さ」**という考え方
- ズレを感じたときのシンプルな対処法
「さっきまでよかったのに」——よくある瞬間
結論からお伝えすると、同じチャットを長く使い続けるほど、AIの回答は的外れになっていきます。
これは偶然でも、AIの調子の問題でもありません。構造的に、そうなるようにできているのです。
AIには「机の広さ」の上限がある
AIには、一度に扱える情報量に上限があります。これを、机の広さだとイメージしてください。
私自身も、実践プログラムでAIの仕組みを学ぶ前は、この現象の理由がわからず戸惑っていました。学んでみると、意外とシンプルな話です。
仕事をするとき、机の上に書類を広げますよね。ただ、机には広さの限界があります。書類を次々に置いていくと、古い書類が端から押し出されて、床に落ちていってしまいます。AIの記憶も、これとまったく同じ仕組みです。
机は、思ったより早く埋まっていく
ここで気をつけていただきたいのが、机に載っているのは、私たちが打った文章だけではないということです。
やり取りを続けているあいだ、これまでの会話の履歴も、ずっと机の上に載り続けています。加えて、AIが答える前に内部で考えているプロセスにも、机のスペースが使われています。私たちの目には見えないところで、机はどんどん埋まっていっているのです。
だから、体感として「まだそんなに長く話していないのに」と思っていても、実際には机はかなり埋まっていることがあります。机がいっぱいになると、古い情報から押し出されて忘れられ、AIの回答は的外れになっていきます。
対処法はシンプル——机をきれいにする
対処法は、とてもシンプルです。
回答がズレてきたと感じたら、粘らずに新しいチャットを立ち上げ直す。これだけです。
会議室を長く使い続けて資料が散らかってきたら、一度片付けて新しい会議室に移った方が早いのと同じです。同じチャットにこだわって粘るより、まっさらな机で再スタートした方が、結果的に早く的確な答えにたどり着けます。
営業現場での使い方
この考え方を、営業マネージャーの現場に当てはめてみます。
長期にわたる案件の壁打ちを、1つのチャットでずっと続けているようなとき。「話が長くなってきたな」と感じたら、そこまでの要点を3〜5行程度でまとめて、新しいチャットに貼り付けて再スタートしてみてください。
机をきれいにしてから、また仕事を始めるイメージです。要点さえ渡せば、AIはすぐに文脈をつかんでくれます。
今日から始める小さな一歩
次に、AIとのやり取りが長くなってきたと感じたら、こう試してみてください。
ここまでの要点を3〜5行でまとめて、新しいチャットに貼り付けてから続きを相談する
これだけで、精度の落ちたチャットに粘り続けるストレスがなくなります。
まとめ
同じチャットを長く使い続けるほど、AIの回答は的外れになっていきます。
回答がズレてきたら、粘らずに新しいチャットを立ち上げ直せばいい——机の上がいっぱいになっただけ——これが今日の takeaway です。
次の記事では、「〇〇しないでください」というお願いを重ねても、なぜか守られなくなっていく問題についてお伝えします。
