第10回
「〇〇しないで」を30個書いても破られる——NGリスト地獄
芳村裕太 · LLC Rip.D
- 営業マネージャー
- AI
- AIの限界
地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。
営業マネージャーの方から、こんなお悩みをよく聞きます。
「AIに提案書を作らせて、出てきたものが少し違ったので『この表現はNG』と指摘したんです。それを繰り返してNGリストがどんどん増えていったんですが……あるとき気づいたら、最初に伝えたはずのルールまで無視されるようになっていました」
これは、AIが気まぐれになったわけではありません。実は、指示を増やせば増やすほど起きやすくなる、構造的な現象です。
この記事でわかること
- NGリストを増やすほど逆効果になる理由
- AIの**「注意力」**の仕組み
- 効果的な指示の出し方
「NGリストを増やしたのに、余計に聞いてくれない」
結論からお伝えすると、AIへの指示は、増やせば増やすほど守られやすくなるわけではありません。むしろ逆で、指示が増えるほど、1つ1つへの注意は薄まっていきます。
AIの注意力は、常に合計100%
AIは、受け取った情報のどこに、どれだけ注目するかを内部で計算しながら答えを作っています。この注目の向け先の合計は、常に100%になる仕組みになっています。
指示が1つだけなら、注目のほぼ全部がそこに向けられます。「ですます調で書いて」という指示だけなら、AIはそこに集中して、ほぼ完璧に実行してくれます。
指示を増やすほど、1つ1つが薄まっていく
ところが、「ですます調で」に加えて、「この表現はNG」「この言い方もしないで」と指示を10個、20個、30個と積み重ねていくとどうなるか。
注目の向け先の合計は変わらず100%のままなので、1つ1つに向けられる注意は、物理的に薄まっていきます。だから、NGリストを30個書いたはずなのに、ある時点から最初に書いたルールまで守られなくなる、という現象が起きます。
これは、AIの注意力をスポットライトだと考えるとわかりやすいと思います。1人だけを照らせばくっきり見えますが、30人に分散させれば、それぞれはぼんやりとしか見えなくなります。人に一度に30個の注意事項を伝えても、全部は覚えていられないのと同じ感覚です。
対処法は「絞る」こと
対処法は、指示を増やすことではなく、必要最小限に絞ることです。
修正指示を追加し続けるのではなく、一度立ち止まって、「今回、絶対に外せない指示は何か」を2〜3個に絞り込む。そのうえで、最初の依頼文自体を作り直す方が、結果的に思い通りの出力に早くたどり着けます。
営業現場での使い方
この考え方を、営業マネージャーの現場に当てはめてみます。
提案書やメール文面、議事録などをAIに作らせて、細かい修正指示を積み重ねているとき。指示がどんどん増えていると感じたら、一旦立ち止まってください。「今回、本当に外せない条件は何個か」を2〜3個に絞り込み、そのうえで依頼文を最初から作り直す方が、NGリストを積み増すより早く、狙った結果にたどり着けます。
今日から始める小さな一歩
次にAIへの修正指示を追加しようとしたら、リストに書き足す前に、こう自分に聞いてみてください。
今回、本当に外せない指示は何個だろう?
2〜3個に絞ってから、依頼文を作り直してみてください。
まとめ
AIへの指示は、増やせば増やすほど守られやすくなるわけではありません。
指示は『あれもこれも』ではなく『今回はこれだけ』に絞る——欲張って増やすほど、逆に守ってもらえなくなる——これが今日の takeaway です。
次の記事では、AIに資料を渡すときの、もう1つのコツについてお伝えします。
