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第34回

渡す前に考える——「AIの回答が浅い」と感じた時に疑う3つのポイント

芳村裕太 · LLC Rip.D

  • 営業マネージャー
  • AI
  • 情報整理

地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。

AIの回答が浅いと感じたとき、私たちはまず「指示の書き方が悪かったのだろうか」と考えます。もっと細かく条件を足そう、言い方を変えてみよう、と。

ですが、指示を何度も書き直してもなお回答が浅いままなら、原因は指示の側にないことがあります。AIが読んだ資料が、そもそも判断のつかない状態だった、というだけのことも多いのです。

この記事でわかること

  • 指示を直しても回答が浅いままのとき、本当に起きていること
  • AIに頼む前、人間にしかできない判断は何か
  • 忙しい日でも回せる、渡す前の短い確認

資料を全部渡せば賢くなる、わけではない

結論からお伝えすると、AIに関係しそうな資料をまとめて渡すほど回答は良くなる、という関係にはなっていません。むしろ逆に働くことがあります。

AIが一度に読み込める量には上限があります。渡された資料が多いほど、AIはまず「このうちどれが今の話に関係するのか」「どれが最新なのか」を見分けることに力を使います。見分けるために力を使った分だけ、肝心の中身を考える余力は減っていきます。

人に頼むときのことを思い浮かべると近いかもしれません。新しく入ってきた方に「この棚の資料を全部読んで、提案書を作っておいて」と頼んだら、その方はまず棚の整理から始めることになります。悪気なく、読む順番を決めるところから始めるしかないのです。

何を読ませるかは、AIには決められない

ここが今日いちばんお伝えしたいところです。AIは渡されたものの中では上手に考えてくれますが、「そもそも何を渡すべきだったか」は判断できません。どの資料が今の商談に効くのか、どれが去年の名残なのかを知っているのは、その仕事をしている人だけです。

たとえば、お客様への提案書をAIに下書きさせるとします。共有フォルダには、過去の提案書、価格表、競合の調査メモ、社内の議事録が入っている。このうち「今回の提案の土台になるのはこの価格表と、この類似案件の提案書」と指させるのは、案件を握っているマネージャーだけです。

つまり、AIに頼む前のこの一手間は、AIに肩代わりしてもらえない種類の仕事だということになります。指示の書き方を工夫する話とは、別の場所にある作業です。

机の上に載せる量は、3つを目安にする

うまくいっている状態には、共通点があります。渡された材料が、3つ程度に絞られていることです。

材料が絞られていると、AIは「どれが今の話に関係するのか」を見分ける手間を省けます。見分けに使っていた力が、そのまま中身を考えることに回る。ここは同じAI・同じ指示でも結果に差が出るところです。

絞り込みの基準は3つあります。今回の判断のもとになる正しい資料、その内容が今も生きているかどうか、そして見落とされがちなのが渡さなくていいものです。3つ目は特に効きます。たとえば去年のキャンペーン価格表は、フォルダに残っていても今回の商談では害にしかなりません。これを外せるのは、その案件を握っている人だけです。読ませないと決めることも、読ませるのと同じくらい大事な準備だということになります。

こう書くと、「まずフォルダ全体を整理してからでないと始められない」と感じるかもしれません。ですが必要なのは、これから頼む1つの仕事について材料を選ぶことだけです。棚全体を片付ける必要はなく、今日の机の上に何を載せるかを決める、という感覚に近いと思います。

今日から始める小さな一歩

次にAIへ資料をまとめて渡そうとしたとき、送信する前に一度だけ手を止めて、そのうち1つを「これは今回いらない」と外してみてください。

古い価格表でも、別案件の議事録でも構いません。1つ減らすだけなら1分もかかりません。指示文を練り直すより、この一手のほうが結果に効くことは少なくないと思います。

まとめ

AIの回答が浅いとき、原因が指示の書き方ではなく、渡した材料の側にあることがあります。何を読ませ、何を読ませないかを決められるのは、その仕事の中身を知っている人間だけです。

AIに足りないのは指示の細かさではなく、どれを見て考えるかという材料の指定——これが今日の takeaway です。

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