第33回
「この情報、どこにあるんだっけ?」——探す労力は、AIにも人にも同じだけかかっている
芳村裕太 · LLC Rip.D
- 営業マネージャー
- AI
- 情報整理
地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。
前回、大事なのはファイルの数ではなく、「今も正しい内容かどうか」を見分けられる状態にしておくことだという話をしました。
ですが、たとえ今も正しい内容だけが残っている状態を作れたとしても、それだけではまだ足りません。その正しい情報が、チャットにも、提案書のテンプレートにも、手順書のメモにも、あちこちに分かれて置かれていたらどうなるでしょうか。今度は「その情報はどこにあるのか」を探す労力が発生します。内容を見分ける負担は減っても、置き場所を探す負担がAIにも人にもそのままのしかかるのです。
原因は、「1箇所にまとめる」という言葉の解釈にあります。今回は、まとめ方そのものの境界線を整理します。
この記事でわかること
- 「1箇所にまとめる」を勘違いすると起きること
- 分けて保存してもいい情報と、重複させてはいけない情報の違い
- チームの情報を、この境界線に沿って整えるコツ
「1箇所にまとめる」は「1つのファイルに詰め込む」ではない
結論からお伝えします。目指すべきは「情報の正本を1箇所に集約する」ことであって、ファイルの数を減らすことではありません。同じ企画書についての情報が、チャットにも、メールの添付にも、共有ドキュメントにも散らばっている状態をやめて、「ここを見れば最新かつ正しい」と言える場所を、常に1つに決めておきます。
これは、AIを実践的に学ぶ中で知った SSoT(Single Source of Truth、「唯一の正しい情報源」)という考え方の核心です。難しい専門知識ではなく、「我が家のカレーのレシピはこのノートに書いてある」というのと同じ、シンプルな整理の原則です。
分けて保存してもいい情報と、重複させてはいけない情報
情報を複数のファイルに分けること自体は問題ありません。問題になるのは、同じ内容を別々のファイルに重複して書いてしまうことです。たとえば、商品情報をA商談用の資料にもB商談用の資料にも書き込んでしまうと、商品情報が変わったときに両方を書き換えなければならず、片方だけ直して古い情報が残る、という事故が起こります。ファイルを分けるのは自由でも、同じ情報を書く場所は1箇所だけに決め、他のファイルからはそこを参照する形にしておく。この「置き場所を1つに決める」ことが、崩れないための境界線です。
この境界線が特に崩れやすいのが、チームでAIに使わせる手順書です。手順書自体はAIに指示を与える言葉の設計図のようなもので、専用のプログラムを組めるエンジニアでなくても作れます。
手順書を書いているうちに、「ここも書いておかないと」と、料金表や在庫状況のように頻繁に変わる情報まで手順書本体に丸ごと書き込んでしまうことがあります。すると、料金が変わるたびに手順書自体を開いて直す羽目になり、直し忘れた箇所からAIが古い料金を答えてしまう、という事故につながります。こうした頻繁に変わる情報は手順書とは別のファイルに分け、手順書側には「料金は最新の料金表を参照」と一行書いておくだけにする。これなら、料金表さえ直せば手順書は触らずに済みます。
チームの情報を、この境界線に沿って整えるコツ
いきなり全ての情報を整理しようとすると、それだけで力尽きてしまいます。まずは、チームで最もよく参照する情報——たとえば商品情報や料金表、よくある問い合わせへの回答方針など——から手をつけるのがおすすめです。
今日から始める小さな一歩
チームでよく参照する情報を1つ選び、「これについて、ここを見れば正しいと言える場所はどこか」をメンバーに聞いてみてください。
もし答えがバラバラだったり、「たぶんこれだと思う」という曖昧な返事だったりしたら、それが最初に手をつけるべき情報です。1つずつ場所を決めて増やしていけば、AIに仕事を渡したときの精度にも、そのままつながっていきます。
まとめ
情報を分けて保存するのは自由、ただし同じ情報を書く場所は1箇所だけに決める——この境界線を意識するだけで、チームの情報整理は変わります。
料金表や在庫状況のように、頻繁に変わる情報ほど手順書の外に出し、参照先を1箇所にまとめる——これが今日の takeaway です。
