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第37回

説明を尽くしても決まらない商談——資料を10ページ足すより、目に見える粗いたたき台を1つ作る効果

芳村裕太 · LLC Rip.D

  • 営業マネージャー
  • AI
  • 会議

地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。

商談や会議で何かを通したいとき、私たちは資料を厚くすることで備えようとすることがよくあります。想定される質問に先回りし、根拠を足し、ページを増やす。

ところが実際の会議では、丁寧に作り込んだ資料ほど「よくわかりました。持ち帰って検討します」で終わってしまうことがあります。反対されたわけでもないのに、話が前に進まない。

この記事でわかること

  • 資料を厚くするほど、かえって決まらなくなる理由
  • 人が「いいですね」と言うのは、何を見たときか
  • 粗いものを先に見せる進め方でも、なぜ失礼にならないのか

説明が足りないのではなく、共通のイメージが存在していない

結論からお伝えすると、自分の理想通りに「相手が動いてくれない(明確な意思決定をしてくれない)原因」は説明不足ではないことが現場では多くあります。今回の記事では「読み手に想像させる絵がない」という原因に焦点を当てて言語化していきます。

文章や細かいグラフなどで説明を受けた人は、頭の中でそれを組み立て直してから判断します。組み立ての手間が大きいほど、判断は先送りされます。「持ち帰って検討します」という言葉は、多くの場合「まだ頭の中で整理がついていない」という状態を表していると、ここでは考えてみてください。

例えば、会社の会議を想像してみてください。「今日のテーマはこれです」と、言葉と文字情報で埋め尽くされた資料だけで参加者全員に伝えて話し始めた時、10人いれば10通りの「イメージ」が参加者の頭の中に作られます。会議の後半で意見が噛み合わなくなるのは、そもそも全員が「別々のもの」を思い浮かべたまま議論が進んでしまっていたということはよくあります。

人は、目の前で動くものを見て決めている

判断が早く進む場面には共通点があります。決める側が、完成したものを「自分の目で見ている」ということです。

たとえば、新しい営業支援の仕組みを経営層に提案する場面。効果とコスト、他社事例を並べた資料を何ページ用意しても「検討します」で止まりがちなのは、決める側の頭の中に、実際の場面や運用のイメージがまだ浮かんでいないと考えることができます。

これは、私たち営業マンが商談でやっていることの裏返しでもあります。商品の良さを言葉で説明するより、実物を手に取ってもらったほうが早いことがある。社内の意思決定でも、起きていることは同じです。

人は理屈だけで決めているわけではなく、目にしたものや感触にも大きな影響を受けます。だからこそ、100ページの説明より、粗くても目の前で見せる一つのほうが強いという考え方です。

粗いまま見せることは、手抜きではない

とはいえ、完成していないものを人前に出すのは気が引ける——そう感じる方も多いと思います。 この感覚が、実は判断を遅らせる側に働いています。

先に形にする狙いは、完成品を披露することではありません。議論の土台を、全員の目の前に一つ置くことです。粗いものを見た人は「ここは違う」「この部分は要らない」と具体的に指摘できます。抽象的な資料に対する「なんとなく不安」という反応より、はるかに前に進む可能性が高い。経営層向けの提案でも、チームの方針説明でも、先に述べた会議で議論がずれていく現象も根っこで起きていることは同じです。

AIが使えるようになって変わったのは、この「一度形にしてみる」の手間が劇的に減ったことで。以前なら試作品や目に見える完成物をつくるのに何日もかかったものが、今は考えを言葉で伝えるだけで、ひとまず動く形が出てきます。もちろん、そのまま使える完成品が出てくるわけではありません。ただ、議論のために一度置いてみる、という用途であれば十分に足ります。

作るといっても、専用のソフトや立派な商品をつくるようなお話ではありません。誰に、何を、どう見せたいかをAIに言葉で投げる。出てきたものを最低限の「目に見える形」に仕上げ、相手に共有してから伝え始める。伝える情報の量を増やすのではなく、「相手の頭でイメージがつくりやすい状態」を作ることに集中してみると目の前の相手の反応はきっと変わるはずです。

今日から始める小さな一歩

次の会議で提案したいことがあるなら、資料を1ページ増やす代わりに、その資料の中身を「もし実現したらこんな素敵な未来が待っている」という一枚の絵にしてみてください。

完璧である必要はありません。体裁が整っていなくても大丈夫です。会議の冒頭でその一枚を出して、「まずこれを見てください」と言えるかどうかで、その先の議論の進み方が変わってきます。

まとめ

商談や会議など、自分の思い通りに話が前に進まないのは「説明が足りない」からではなく「聞き手に想像させる絵がない」からかもしれないという視点を持つ。

説明を1ページ足すより、粗くても目に見える一つを置くほうが早い——これが今日の takeaway です。

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