第30回
「うちの仕事には型がない」を疑う——業務を分解するとAIに渡せる基準が見えてくる
芳村裕太 · LLC Rip.D
- 営業マネージャー
- AI
- 業務効率化
地方中小企業の AI 導入・活用支援をしているLLC Rip.D(リップ)代表の芳村です。
このブログは営業チームのマネージャー・経営者さまに向けて書いています。
営業領域20年超の現場経験とプロのエンジニアのもとで学んだ AI に関する専門的な知見を融合して、事業活動のお役に立つ情報を「現場の言葉」でわかりやすくお伝えしています。
模範解答(理想の完成形を1つAIに渡す)という考え方を知ると、「なるほど、うちも取り入れよう」と思う一方で、「これが効くのは定型的な業務だけで、うちの複雑な仕事には使えないだろう」と感じる方もいるのではないでしょうか。
提案書のような案件ごとに内容が変わる仕事、採用面接のような毎回相手が違う仕事——「うちの会社にはうちのやり方があるから、模範解答なんて作りようがない」。そう思うのは自然なことですが、実はここに見落としがあります。
この記事でわかること
- 模範解答が効くのは、一部の定型業務だけではないという視点
- 「型があるか」ではなく、理想のゴールを言葉にできているかが分かれ目
- 業務を分解して、ゴール・合格ライン・進め方を見つける考え方
効くかどうかは「型」ではなく「言語化できているか」で決まる
結論からお伝えします。模範解答が効くかどうかを分けるのは、その仕事に決まった型があるかどうかではありません。あなたの会社・チームにとっての「理想のゴール」「合格ライン」「進め方」を、言葉にできているかどうかです。
「型のある仕事にしか効かない」と考えてしまうと、本来なら模範解答が効くはずの業務まで、抽象的な指示を並べるだけのやり方を続けてしまうことになります。
どんな業務にも、その会社なりの合格ラインがある
営業チームの仕事を見渡すと、性質はさまざまです。お客様に直接関わる商談やプレゼン資料づくりもあれば、日報や週報のようにチーム内で完結する仕事もあります。マネージャーが部下にフィードバックを伝える場面や、採用面接で候補者を見極める場面も、広い意味では「営業チームの仕事」に含まれます。
これだけ性質が違っても、どの業務にも共通することが1つあります。それは、あなたの会社には「ここまでできれば合格」と言えるラインが、必ずどこかにあるということです。案件ごとに内容が変わる提案書でも、課題の整理から解決策、次のステップへとつなげる流れには、その会社らしい進め方があるはずです。面接での質問の仕方や評価の基準にも、経験を積んだ人ほど「こう聞けば見極められる」という感覚を持っています。それがまだ言葉になっていないだけなのです。
ただし、簡単ではない仕事もあります。デザインやコピーライティングのような創造系の仕事は、製造業のように「ここまで到達すれば完成」という基準を引きにくく、ゴールの言語化そのものが難しく感じられるかもしれません。それでも、あなたの会社なりの「らしさ」や「外してはいけない軸」を言葉にすることはできます。簡単ではありませんが、時間をかけて言葉にする価値はあります。
業務を分解して、ゴール・合格ライン・進め方を見つける
理想のゴールを見つけるコツは、いきなり業務全体を1つの塊として捉えないことです。私たちは日々の仕事を、感覚で一括りにこなしてしまいがちです。まずはその業務を、工程ごとに小さく分解してみましょう。
たとえば提案書作成なら、「お客様の課題を聞き取る」「課題を整理する」「解決策を組み立てる」「資料に落とし込む」というように工程を分けてみます。(本当はもっと細かく分解しますがここで簡単に)ブロックごとに並べてみると、自分が無意識のうちに「ここまでできれば合格」と判断していた基準が、初めて意識の上に浮かび上がってきます。感覚でやっていたことを、一度言葉に戻す作業です。
過去に評判の良かった提案書、契約につながった商談の進め方、迷わず採用できた候補者の面接——うまくいった実例をこの工程ごとに見直すと、その会社なりのゴール・合格ライン・進め方がどこにあったかが見えてきます。ここで大事なのは、良かったブロックを1つだけ選ぶのではなく、工程すべての合格ラインを言葉にすることです。1つの工程だけ精度を上げても、他の工程が曖昧なままでは、業務全体としての模範解答にはなりません。すべてのブロックの基準がそろって初めて、AIに渡せる模範解答の素材が完成し、案件や相手が変わっても骨格の質が安定します。「うちの仕事には型がないから無理だ」と思っていた業務ほど、分解してみる価値があります。
今日から始める小さな一歩
営業チームの業務を1つ選び、工程ごとにできる限り細かくブロックに分解してみてください。商談でも、資料でも、面接でも構いません。
分解したブロックの1つひとつについて、「ここまでできれば合格」と言える基準を、面倒でも全部書き出してみましょう。
まとめ
模範解答が効くのは、決まった型がある仕事だけではありません。
業務を細かく分解し、ブロックごとの合格ラインを1つずつ言葉にしてAIに渡せば、どんな仕事にも模範解答は作れる——これが今日の takeaway です。
